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東京地方裁判所 昭和53年(レ)171号 判決 1980年8月26日

控訴人(附帯被控訴人) 田中繁男

右訴訟代理人弁護士 田中富雄

同 白石光征

同 堀敏明

被控訴人(附帯控訴人) 株式会社 大宝

右代表者代表取締役 大久保焏男

右訴訟代理人弁護士 村上重俊

主文

一1  原判決主文第一項を次のとおり変更する。

2  控訴人は被控訴人に対し、金八三万八〇〇〇円及びこれに対する昭和五三年三月一日から支払済みに至るまで年六分の割合による金員を支払え。

3  被控訴人のその余の請求を棄却する。

二  控訴人の反訴請求に係る控訴を棄却する。

三  訴訟費用は附帯控訴費用を含め、第一、二審とも控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。

四  この判決は、第一項の2及び第三項について仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人(附帯被控訴人)

1  原判決を取消す。

2  被控訴人の請求及び附帯控訴をいずれも棄却する。

3  被控訴人は、控訴人に対し、金四九万八〇〇五円及びこれに対する昭和五三年二月三日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は第一、二審を通じ、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人(附帯控訴人)

1  本件控訴を棄却する。

2  被控訴人はその請求の趣旨を当審において次のとおり訂正した(原判決主文第一項にかかる部分。なお同項中家屋明渡にかかる部分は当審において取下げた。)。

「控訴人は被控訴人に対し金一〇三万六〇〇〇円を支払え。」

3  右2の金員について昭和五三年三月一日から支払済みに至るまで年六分の割合による金員を支払え。

4  右2及び3について仮執行宣言。

5  控訴費用及び附帯控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。

第二当事者の主張

(本訴について)

一  請求原因

1 被控訴人は控訴人に対し昭和四七年一一月九日別紙物件目録記載の貸室(以下「本件貸室」という。なお同目録記載の共同住宅全体は「本件マンション」という。)を次の約定により貸し渡した(以下「本件賃貸借契約」という。)。

(一) 期間 昭和四九年一二月一日から二年間

(二) 家賃 一か月金三万八〇〇〇円、毎月末限り翌月分を支払う。

(三) 敷金 金一七万六〇〇〇円

(四) 特約 家賃の支払を一か月でも怠ったときは催告なく賃貸借契約を解除することができる。

2 被控訴人と控訴人とは右1、(一)の期間満了後賃料を一か月金四万四〇〇〇円と改訂して本件賃貸借契約を更新した。

3 控訴人は昭和五一年六月分以降の家賃の支払をしない。そこで、被控訴人は同年一〇月一二日口頭で控訴人に対し本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をなした。

4 本件貸室の相当賃料額は解除後の昭和五一年一〇月一三日から同年一〇月三〇日までの間は一か月金四万四〇〇〇円、同年一一月一日から控訴人が本件貸室を明渡した昭和五三年二月末日までの間は一か月金六万二〇〇〇円である。

5 以上のとおり、控訴人は被控訴人に対し昭和五一年六月一日から同年一〇月一二日までの間一か月金四万四〇〇〇円の割合による賃料及び同月一三日から昭和五三年二月末日までの間右4の割合による賃料相当損害金の支払義務を負うところ、被控訴人に対し、控訴人が被控訴人に対して有する敷金返還債権を自働債権として、昭和五二年一月一三日の原審第二回口頭弁論期日において被控訴人の有する延滞賃料債権と対当額で相殺する旨の意思表示をなしたので、被控訴人が控訴人に対して有する賃料及び損害金支払請求権の額は金一〇三万六〇〇〇円となった。

6 被控訴人はマンション賃貸を業とする株式会社である。

7 よって、被控訴人は控訴人に対し、金一〇三万六〇〇〇円及びこれに対する昭和五三年三月一日から右金員支払済みに至るまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1、2、3及び5のうち相殺の意思表示のあったこと並びに6の事実はいずれも認める。

2 その余の請求原因事実はすべて否認する。

三  抗弁

1 (遮音構造の不備)

本件貸室はその界壁がわずかにベニヤ板一枚で仕切られているため、室内の物音や話し声を隣室に遮音できない防音上劣悪な構造である。

また、本件マンションの右の遮音構造は、建築基準法第三〇条の二、同法施行令第二〇条ノ二に定められている遮音構造・数値の基準を下回り、違法な建物である。

このため、原告は後記のとおり近隣騒音による多大の生活妨害を受けた。

2 (賃貸人の修繕義務)

一般に賃貸借契約において、賃貸人は賃借人をして賃借物を使用収益させる義務を負うが、本件のような共同住宅の賃貸借契約において右1に記載のとおり建物の遮音構造がきわめて不良のため、建築基準法に定める遮音構造を備えていれば当然に遮音されるはずの隣室の生活騒音等が遮音されないときは、少なくとも賃借人の通常の使用収益に支障のある状態というべきであり、その結果として、賃貸人たる被控訴人は右の障害を除去するため最低限度本件建物の界壁を建築基準法に定める遮音構造か、もしくはそれと同一の効果を有するものに修繕すべき義務を負う。

3 (賃料減額請求権の行使)

被控訴人は右2記載の修繕義務を負うにもかかわらず、何らその履行をなさず、その結果控訴人は本件貸室を通常の居住環境で使用することができず、その使用できなかった割合は少なくとも賃料の三割相当分を下らない。

そこで、控訴人は被控訴人に対し昭和五四年七月一七日当審第七回口頭弁論期日において、賃料額の三割の減額請求をなした。この減額請求の効果は控訴人が通常の使用を享受できなかったとき、即ち本件においては本件賃貸借の開始時に遡って効力を生ずるから、控訴人が本件賃料額の支払を停止した時点(昭和五一年六月一日)では、左記のとおり金五一万一二〇〇円の賃料過払を生じており、これに敷金差入額金一七万六〇〇〇円を加えると控訴人は右時点で合計金六八万七二〇〇円の債権を有していたこととなる。

昭和四七年一二月一日(入居時)から昭和四九年一一月三〇日まで(二四ヶ月間)。賃料一か月金三万八〇〇〇円

38,000×24×0.3(減額分)=273,600…(1)

昭和四九年一二月一日から昭和五一年五月三一日まで(一八ヶ月間)。賃料一か月金四万四〇〇〇円

44,000×18×0.3=237,600……………(2)

(1)+(2)=511,200

4 (損害賠償請求権)

(一) 被控訴人は、前記2記載の修繕義務の他、控訴人が訴外松崎リサ外三名から休養、安眠をとることを妨害された(その内容については、原判決別紙「損害賠償債権の発生原因及び金額」の記載を引用する。)ことにつき、右訴外人らに対し場合によっては明渡を求める等賃貸人としてしかるべき処置をとることによって静謐を保ち、本件貸室を使用収益に適する状態に置く義務を負い、また本件賃貸借契約締結時においては、賃借人になろうとする控訴人に対し、本件貸室及びマンションの状況が前記1記載のとおり遮音構造が不十分であることを告知すべき義務を負っていたが、被控訴人は右修繕義務及び告知すべき義務について全くその履行を怠り、また静謐を保って本件貸室を使用収益に適する状態に置く義務については十分な履行を尽さなかった。このため、控訴人は右引用の原判決別紙記載のとおり、隣人らによって静穏に居住することを阻害された。

(二) 右(一)記載の被控訴人の債務不履行により控訴人が取得した損害賠償請求権の金額は、次の(1)及び(2)のとおりである。

(1) 慰藉料債権金一一二万五〇〇〇円

(右金額の内訳は前引用の原判決別紙のとおり)

(2) 賃料額の三割相当分

(各月賃料額の三割相当分)

5 (相殺)

前記のとおり、控訴人は被控訴人に対し、

(一)  賃料過払分等金六八万七二〇〇円(前記3)

(二)  慰藉料金一一二万五〇〇〇円(前記4、(二)、(1))

(三)  賃料額の三割相当の損害賠償請求権(前記4、(二)、(2))

の債権を有していたところ、控訴人は右(一)ないし(三)の各債権を自働債権として、被控訴人に対し、(一)について昭和五四年七月一七日の当審第七回口頭弁論期日において、(二)について昭和五二年一月一三日の原審第二回口頭弁論期日において、(三)について昭和五四年一二月一一日の当審第一〇回口頭弁論期日において、それぞれ被控訴人の控訴人に対する昭和五一年一一月分以降の家賃債権と対当額について相殺する旨の意思表示をなした。

6 (解除の無効)

被控訴人主張の解除は左記いずれかの理由により無効である。

(一)  被控訴人は控訴人に対し、前記の本件貸室の静謐を保ち使用収益に適する状態に置く義務を負っていたにもかかわらず、その履行を怠ったので、控訴人には家賃の債務不履行は生じない。

(二)  前記5記載の相殺の結果、遡及的に賃料債務は消滅するので、本件解除の当時控訴人は債務不履行の状態に陥っていなかった。

(三)  本件解除は、本件貸室についての遮音状況につき係争の最中に、何らの催告もなく(無催告の特約は相当の理由がなくその効力は否定されるべきである。)なされたものであり、信義則に反し、あるいは権利の濫用として無効である。

四 抗弁に対する認否

1 抗弁1記載の事実は否認する。

2 賃貸人の修繕義務についての控訴人の主張は否認する。一般的に賃貸人が賃借人に対し使用収益させる義務を負い、それに必要な修繕をなす義務を負うのは当然であるが、賃貸住宅において右の各義務を考えるに当っては、特にその程度について、賃貸住宅の現況と賃料の市場価格との相関関係を基礎として決定されるべきものであり、一般的な基準があるものではない。本件マンションは立地条件に比較すれば賃料額は低廉であり、控訴人主張の義務はない。

3 抗弁3ないし6記載の事実中、減額請求及び各相殺の意思表示がなされたことは認めるが、その余の事実はすべて否認する。

(反訴について)

反訴についての請求原因及びその認否は原判決の事実摘示と同一であるので、その記載を引用する。

第三証拠《省略》

理由

一  (本訴請求原因について)

本訴請求原因事実中、本件賃貸借契約の成立及び更新、控訴人に賃料不払のあったこと、被控訴人が解除の意思表示をなしたことは、いずれも当事者間に争いがない(なお、賃料相当損害金については、後記認定のとおり。)。

二  (本訴についての抗弁について)

1  修繕義務の発生について

控訴人は、本件貸室の遮音構造が不完全であるので、賃貸人である被控訴人はそれを相当な程度(同主張によれば建築基準法上の基準)にまで改修すべき「修繕義務」があり、それを尽さない場合には賃借人側に賃料減額請求権が発生すると主張する。

しかし、民法の定める「修繕義務」とは、賃貸借契約の締結時にもともと設備されているか、あるいは設備されているべきものとして契約の内容に取り込まれていた目的物の性状を基準として、その破損のために使用収益に著しい支障の生じた場合に、賃貸人が賃貸借の目的物を使用収益に支障のない状態に回復すべき作為義務をいうのであって、当初予定された程度以上のものを賃借人において要求できる権利まで含むものではない。

《証拠省略》によると、本件貸室は鉄骨造陸屋根三階建共同住宅のうちの一室で、その各戸の界壁はベニヤ板一枚程度のものであって遮音構造としては不完全なものであるといえるが、その構造は賃貸借契約の当初からのものであって、契約の後に変更を生じたものではないから(本件貸室の界壁は、他の貸室と全く同じ構造のものであるが、賃貸人において遮音構造を設備するという特約が存したものでもない。)、賃借人である控訴人に右の構造の補強・改善を求める権利、即ち賃貸人についていえば控訴人の主張する修繕義務が発生するものではなく、従って右義務の存在を前提とする賃料減額請求権の発生を認めることはできない。

なお、控訴人は本件貸室の界壁が建築基準法に定める基準を充たしていないことを指摘するが、そのことから直ちに私法上の法的効果(例えば、賃貸物の修繕義務、賃料額の減額請求権等)が生ずるものでもない。

2  損害賠償請求権の発生について

控訴人主張の義務違反のうち、修繕義務違反の主張については、右1のとおり修繕義務の発生自体を認めることができない。また賃貸人として使用収益を尽させるため各賃借人間の調整をはかるべき義務の違反の主張については、当審も右義務違反の事実は存しないものと認めるが、その理由は原判決理由第一の二の1ないし5の記載のとおりであるので、右記載を引用する。

また、いわゆる告知義務違反の点についても、《証拠省略》によれば、被控訴人が本件賃貸借契約締結に際し、とりたてて界壁の構造について説明をしなかったことは認められるが、一方ことさらに界壁の構造について嘘をいったり控訴人の下見を拒んだり等したとの事情は認められず、むしろ界壁の構造遮音効果等については、賃借人自ら実見の上契約するのが通常のことというべきであることからすれば、なるほど一定の契約関係に入ろうとする当事者には信義則等の見地から種々の義務が発生するとしても、本件において被控訴人に控訴人主張の告知義務が発生し、被控訴人がこれを怠ったとまでいうことはできない。

3  解除無効の主張について

控訴人は、第一に、被控訴人において賃借人間の調整を計り、静謐を保って控訴人に本件貸室を使用収益させる義務の不履行があったことを理由として、控訴人には解除当時解除原因となる賃料不履行はなかったと主張するが、被控訴人に右義務違反の事実が認められないことは前認定のとおりであり、第二に、賃料減額請求権の行使の結果生ずる賃料過払分返還請求権、被控訴人の債務不履行に基づく損害賠償請求権を自働債権とする相殺により債務不履行は遡及的に解消されたので解除は無効であるとの点についても、そもそも解除後の相殺の意思表示により不履行に係る賃料債務が遡って消滅しても解除の効力に影響はないというべきであり、また本件においては前記控訴人主張の各自働債権の存在が認められないことは前認定のとおりであり、第三に、本件解除は無催告の信義則違反又は権利の濫用であるとの点についても、本件賃貸借契約に無催告解除の特約のあることは当事者間に争いはないが、本件全証拠によっても右特約の効力を否定するに足る事情の存在を認めることはできない。

従って控訴人の解除無効の主張はいずれも理由がない。

4  各相殺の主張について

控訴人主張の各相殺の主張は、いずれもその自働債権の発生を認めることができないこと前認定のとおりである。

三  賃料相当損害金について

控訴人が賃貸借契約解除後昭和五三年二月末日に至るまで本件貸室を占有することにより被控訴人に賃料相当の損害を与えていたこと及び解除後昭和五一年一〇月三〇日までの賃料相当損害金が金四万四〇〇〇円であることは原判決認定のとおりであるからその記載を引用するが、被控訴人主張の同年一一月一日以降の賃料相当損害金は金六万二〇〇〇円であるとの点については、以下に検討を加える。

本件貸室の賃料が昭和四七年一二月当時金三万八〇〇〇円、昭和四九年一二月当時金四万四〇〇〇円であったことは当事者間に争いがない。また《証拠省略》によれば、本件貸室(二六号室)より若干占有面積の大きい本件マンションの二七号室の賃料が昭和四七年一一月当時(新規契約時)金四万四〇〇〇円、昭和四九年一一月当時(更新時)金五万円であったこと、本件貸室より若干占有面積の狭い本件マンションの二三号室の賃料が、昭和四九年一〇月当時(新規契約時)金四万六〇〇〇円、昭和五一年一〇月当時(更新時)金五万二〇〇〇円であったこと、本件貸室とほぼ同じ本件マンションの二五号室の昭和五一年一一月当時(新規契約時)の賃料が金六万二〇〇〇円であることをそれぞれ認めることができる。

以上によれば、本件マンションの賃料は必ずしも部屋の広狭に応じて決定されたものではなく、契約締結時が後になるほど割高となっていることが認められ、被控訴人主張の金六万二〇〇〇円との金額は昭和五一年一一月当時の新規契約賃料を参考とするものであるが、本件貸室より幾分狭い二三号室ではそのころの更新によって金五万二〇〇〇円となったにすぎず(なお同室の賃料は、本件貸室と比べ昭和四九年末ごろ既に二〇〇〇円高いものであった。)、このことからも、賃料相当損害金を定めるに当っては、単純に解除後直ちに賃貸人の希望額で新規入居があった場合を想定して決すべきものではない。そして前記各室の賃料は、更新時には一律いずれも六〇〇〇円の値上がりとなっていることが認められるところ、本件貸室についても、昭和五一年一一月は丁度更新の時期に当るから、右の割合によれば、同年一二月以降の賃料は金五万円とされたであろうことが推測できる。賃料相当損害金を勘案するについて、契約継続を想定するか、新規契約を想定するかは一概に決せられるものではなく、賃貸借の経過、近隣の賃料その他諸般の事情を考慮すべきことは当然であるが、本件において《証拠省略》によりほぼその記載のとおり認められる前引用の原判決別紙中訴外三森修次らに関する事情(但し、同人らの挙動に関する事実に限る。)並びに前認定の控訴人主張の各事情(界壁の構造が不完全なため、生活上種々の不都合のあったこと。)(なお控訴人はこれらの事情を解除後の時点についても賃貸人の債務不履行の事実として主張するが、解除後については賃料相当損害金の発生を阻止するための一事情として理解すべきものである。)を合せ考えるに、本件貸室についての賃料相当損害金の額は、従前の経過からみて、契約存続を想定した場合の金額を上回るものではないとするのが相当である。

従って、本件貸室についての賃料相当損害金の額は、昭和五一年一二月一日以降金五万円と認められ(右以前は従前賃料額金四万四〇〇〇円)、他にこれを左右するに足る証拠はない。

四  附帯控訴について

控訴人は、当審において昭和五四年六月五日付「訴変更申立書」(同日第六回口頭弁論期旧陳述)をもって、賃料相当損害金を確定額に訂正し、右確定額に対する昭和五三年三月一日から支払ずみまでの遅延損害金の支払を求めたが、右遅延損害金の請求は当審において新たに追加するものであるから、本来「附帯控訴」の申立をもってなすべきであるが、本件においては前記書面の名目の他は、附帯控訴としての要件に欠けるものではないから、右申立を適法な附帯控訴として取扱う。

なお、被控訴人がマンションの賃貸を業とする株式会社であることは、当事者間に争いがない。

五  本訴についての結論

以上により、控訴人は被控訴人に対し、以下1ないし4の金員の支払義務のあることが明らかである。

1  昭和五一年一〇月一日から同月一二日までの一か月金四万四〇〇〇円の割合による賃料(なお、同年六月ないし九月分の賃料が被控訴人の敷金返還請求権との相殺により消滅していることは原判決理由第一の二の8記載のとおりであるから、その記載を引用する。)

2  同月一三日から同年一一月三〇日まで一か月金四万四〇〇〇円の割合による賃料相当損害金

3  同年一二月一日から昭和五三年二月末日まで一か月金五万円の割合による賃料相当損害金

4  1ないし3の合計金八三万八〇〇〇円に対する右金員支払の遅滞後の日であることの明らかな昭和五三年三月一日から右金員支払済みに至るまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金

六  反訴について

反訴については、本件全証拠によるも、その請求原因事実を認めるに足りない。その理由は、本訴につき説示するところと同様である。

七  結び

よって、被控訴人の本訴請求は前記の限度で理由があるから認容すべきであるがその余の部分は失当として棄却すべきであり、また、附帯控訴中遅延損害金の支払を求める部分は理由があるので、これと請求の趣旨の訂正及び減縮のあったことに基づき原判決主文第一項を右の趣旨に変更することとし、本件控訴中反訴請求に係る部分は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九六条、第九二条但書、第八九条を、仮執行宣言について同法第一九六条第一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山田二郎 裁判官 久保内卓亜 内田龍)

<以下省略>

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